慰謝料に関するQ&A
慰謝料に関するQ&A
Q慰謝料の種類や算定方法にはどのようなものがあるのですか?
A
慰謝料は,精神的苦痛を金銭的に評価したものです。
精神的苦痛の内容・程度は,個々の事案により当然異なります。
他方,同じような事案であるのに慰謝料額が大きく異なっては公平とはいえません。
そこで,実務では,慰謝料の枠組みとして,傷害慰謝料,後遺障害慰謝料,死亡慰謝料などある程度定型化しています。
また,算定基準についても,弁護士基準,保険会社基準,自賠責基準という目安があり,いずれかを参考に用いることが多いです。
Q傷害慰謝料における弁護士基準の考え方を教えてください。
A
1 弁護士基準の考え方
弁護士基準では,原則として,入通院期間の長さに応じて,慰謝料額を算定します。
ただし,通院期間が長期にわたる場合は,症状,治療内容,通院頻度などをふまえ,慰謝料算定のための通院期間が修正されることがあります。
一般的には,保険会社基準や自賠責基準よりも慰謝料額が高くなります。
弁護士基準は,「損害賠償額算定基準」(通称「赤本」)や,「交通事故損害賠償額算定基準」(通称「青本」)に掲載されています。
赤本では,別表1と別表Ⅱがあり,むちうち症で他覚的所見のない場合等では「別表Ⅱ」を用い,それ以外の傷害の場合には,「別表Ⅱ」を用います。
また,青本では,基準表に上限と下限があり,むちうち症で他覚的所見のない場合等では下限」,大腿骨の複雑骨折又は粉砕骨折など苦痛や身体拘束が強い症状の場合には「上限」を用います。
あくまで目安にすぎないため,例えば,生死が危ぶまれる状態が継続したときなど個別の事情により,入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮することもあります。
2 具体例
例えば,頸椎捻挫,腰椎捻挫の傷病で6か月通院のみした場合,赤本では別表Ⅱにより89万円,青本では下限の76万円となります。
したがって,この場合の弁護士基準では,76万円~89万円が傷害慰謝料額の目安といえます。
ただし,上記の事案であっても,例えば,ひと月あたりの通院が1回であるなど通院頻度が少ない場合には,慰謝料算定の基礎となる通院期間が修正されることがあります。
上記事案で修正される場合,赤本であれば,慰謝料算定の基礎となる通院期間が18日(6日×3),青本であれば,21日(6日×3.5)となります。
その結果,傷害慰謝料額の目安は約11万2000円~約11万4000円となります。
このように,弁護士基準では,原則として入通院期間に基づいて算定されますが,通院頻度が少ないと評価される場合には,慰謝料算定の基礎となる通院期間が修正され,原則の場合と比較して,慰謝料額が小さくなる可能性があります。